フエタロさんの日記です。

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『ウォッチメン』の映画を見てきたよ。

原作は1985年の冷戦真っ只中のアメリカを舞台に、現実にアメコミヒーローが実在していたら、という外挿法によるifの世界を構築している物語だ。まあぶっちゃけ冷戦とかもう過去の歴史上の話であって、現代の我々を取り巻く状況とは大きく異なるこの時代の危機感を無理に今日に照射してどうこう、みたいなテーマに持っていかずに、素直に原作至上主義で忠実に描写しているのが非常に面白い。
原作読んで面白い、と思った人はおおむね満足できるんじゃないかと。ある大きな改変が1箇所あるのと尺を縮める為の取捨選択を除けば、大体原作に忠実で、その改変に関しても非常に効果的だと思う。僕は再現度の高い映像で見ることによって、原作への理解がかなり深まった。残念な事としては初代ナイトオウルの最後のエピソードが省かれていた事だけど、まあ時間的に仕方ないだろう。さすがに163分の長丁場をこれ以上は伸ばせないだろうからなあ。DVD版ではカットされたエピソードもいくらか収録されるような事をどっかで読んだので、その時の楽しみにということで。
ただし原作未見の人にとっては、その大きな魅力である複雑なストーリーが仇となって、事前予習が必要かつ複数回見ないと理解が困難と思われるので、見る人を選ぶ映画に仕上がっていて、日本でのヒットはまず無理だろうと思う。僕の行った劇場でも高らかないびき声がそこかしこから立ち上っていた。全身タイツの能天気ヒーローがド突きあう娯楽大作を期待していくと苦行を味わうこと必至。まあそんな奴はいないと思うが。少なくとも劇場でパンフレットを先に買って読むくらいはしておくと良いかと。パンフにネタバレないので予習には最適だよ。
映像に関しては、原作に忠実かつ心得たアップデートを織り交ぜて、非の打ち所が殆ど見当たらないレベルになっているだろう。ロールシャッハのマスクの模様が蠢くさまや、Dr.マンハッタンのブラブラっぷりときたらもう最高!ただ、残虐描写に関しては自分は許容範囲だけど苦手な人にはちと厳しいかもというレベルになってた。アームロックされて折れた腕から骨が突き出るとか切断された腕とか誘拐された少女の末路とか。
この作品に出てくるヒーローでは、やはりロールシャッハが一番好きだ。孤独な戦いの中で、ただひたすら己の信じる正義の為に戦い続ける姿はどうしようもなく切なくだからこそあこがれる。オジマンディアスやDr.マンハッタンはタカビーというか非人間的だし、ナイトオウルとスペクター2は自分の快楽に浸ってるとしか思えないし(笑)。現実のしがらみの中で、ヒーローという矛盾だらけの存在と誠実に対峙していたのは作中ではコメディアンと彼だけだったんじゃないかと思う。その葛藤が本作の最大の魅力だと自分には思える。
そういえば些細な事だけど、コメディアンのハンドガンが45.の6インチスライドだったんだけど、割と今風のタクティカルガンだったのにはちょっと違和感が。フレームのアンダーレールってこの時代には存在してたんだろうかね?