フエタロさんの日記です。

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新海誠監督の新作映画「君の名は。」を観てきたよ。

新海監督の持ち味である、切ないストーリーやみずみずしい空気感の画面はそのままに、エンターテイメントとしてのわかりやすさとかクオリティが大幅に向上し、細田守監督と並んで日本のアニメ映画シーンを支える大黒柱と呼ぶに相応しい、フィルモグラフィ最高傑作であった。
ある日突然、心と体が入れ替わる男女の遠距離恋愛を軸に大きな流れへと発展していく新海監督の元祖セカイ系チックなストーリーであるのだが、今までになかったユーモア要素やちょっとしたお色気描写なんかは田中将賀氏のキャラデザインと相まって物凄く生き生きとして魅力的な新境地になっていたと思う。
チーム新海の中核とでもいうべき背景チームの仕事は相変わらず唯一無二のハイクオリティ。写実的でありつつも現実よりも遥かに魅力的なマコティックフィルタを通した背景画の美しさよ。新宿南口や代々木駅のホームや渋谷駅南口のあおい書店の前の歩道橋がこんなに魅力的な景観だったのか!と見慣れた景色が眩く映る。
本作ではそれに加えて作画監督として参加した安藤雅司氏と彼のツテでやってきたスーパーアニメーター軍団による作画も今までの新海アニメになかった醍醐味を築き上げている。日常芝居は勿論の事、流星や爆発やカタストロフィシーンのエフェクトとか、幻想的な回想シーンのタッチなど作画アニメとしての見どころも多い。劇場アニメなのになぜかいきなり始まるオープニングでは田中将賀氏自らの作画だったりするのもサプライズで美味しかったぞ。
しかしながら、初日の劇場に家族連れや女性客なんかで満員になっているのを目の当たりにし、初期の作品から見ているファンとしてその進歩っぷりはうれしく思うものの、初期作における粗削りだけど見たこともない新しい作風だったり、説明不足かもしれないけどどこか考える隙間のあるストーリーとか、尺が短いゆえの疾走感とか、過去のフィルモグラフィにおけるそういう発展途上ながらも輝いていた新海監督のアレコレも大好きだったので、完成度が飛躍的に高まった本作を観て一抹の寂しさというか、完全さゆえの物足りなさというか、何とも言えないもどかしさもあったりもするのであった。もいっかいくらい劇場で見ておきたいな。
あと作品とは関係ないけど、隣の席で独りで見ていた綺麗目のOL風のお姉さんが後半ずーっと鼻をすすりあげていて、そんなに泣けるのか?!とびっくりした。