フエタロさんの日記です。

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黄昏の王国 Lostbelt No. 6 : Fae Round Table Domain, Avalon le Fae


2022年のコミックマーケット100にて羽海野チカ先生が23年ぶりにコミケで新刊を出すという報を聞き、ハチクロのコミックス1巻が発売して以来のファンとしてはぜひとも買いに行かねば!と意気揚々たる勢いでファストチケットを購入して当日への備えを着々と進めてきたのだが、残念ながら新型コロナに罹患してしまいコミケ当日は一応隔離期間は過ぎていたといえ後遺症も残り、このコンディションで炎天下においての数時間の待機列は命の危険すらありえると涙を呑んで参加を断念したのであった。とはいえ受注通販がアナウンスされていたのでそれに申し込んでしばらく先には読めるからと落ち込んでいたら、心優しい知人の方から譲っていただく事が出来たので、そのご厚意に応えるべく感想エントリをしたためていこうと思う。
今回の同人誌は羽海野さんが手がけたソシャゲのキャラクターであるオベロンのラフデザイン集ということで、そういう手合いというとプロの絵描きがあまり手をかけずにコミケで売る本を作るセオリーって感じに思えるけれど、手に取って実物を触ってみるとそんなもんじゃないというのは直ぐ理解できてしまう恐ろしく手の込んだ装丁・デザインにわざわざリライトされた大量のデザイン画と隙間を埋め尽くすかのようなコメント。連載作品を抱えるプロの漫画家がここまでやっていいものだろうか!という衝撃にガツンと殴られるような骨太の同人誌であった。羽海野さんほどの人気作家であれば、商業出版として企画を持ち込めば十分成立する内容だとは思うのだが、あえて自らの手ですべてを作り上げる同人誌という形態でやる意義をまざまざと見せつけられた気分である。ISBNコードという無粋なノイズのないことが嬉しくなる完璧なプロダクツを自分の大好きな作家が自ら作り上げて手元に置ける喜びも凄いのだけど、正直ここまでやって大丈夫ですか…?という心配すらさせられてしまうのである。本文中で型月の二人の健康を慮るコメントがあるのだけど、むしろ俺はあんたの方がよっぽど心配だよ!ちょっとは加減ってもんを覚えようよ!と余計な事を考えてしまうのであった。
内容の方は詳しい依頼が来る前になんとなく想像で書いた解像度のめっちゃ低い感じの妖精サーヴァントから始まり、型月側との設定のキャッチボールを繰り返しながら徐々にオベロンというキャラクターが出来上がってくる過程が浮かび上がってくような感じで、特に衣装の膨大なバリエーションは本編中で3種類しかないのにここまでやるのかあ、と素人な驚きをしてしまった。我々が気軽に遊んでるソシャゲのキャラクターたちもこうやって手間をかけて世に送り出されてるんだなあ、と思うと凄いことだよな。
この本はFGOというゲームをプレイしていない人でも十分楽しめる内容だと思うけど、もちろんプレイした後で読むとより一層深く楽しめるわけで、その最たるはP83のイラストなんかじゃないかと。あの悲劇を目の当たりにして書かれたというイラストには心打たれましたわ。劇中でも活躍の多かったちびオベロンが羽海野さん側からの提案だとか奈落の虫のデザインとかここまで仕事してたのかという発見や、第三再臨のコスチュームのパーツが森の仲間たちのパーツでできてるとかイラストを見るときの解像度が爆上がりしちゃう情報なんかはゲームプレイしてるからこそ味わえる醍醐味かと。
オベロンというキャラクターはFGOにおいて第2部6章できっちりカタがついてるわけだが、この本を読んだ後だとまだまだ美味しいトコが残ってるんじゃないか、可能性を秘めているのではという気持ちがむくむくと湧きあがってきたのでいつの日かオベロンイベントやってティターニア実装、とかいう未来もあるといいなあ…とか妄想するけどでもそういうのは3月のライオンが完結した後にやっていただきたく!とか思ってしまう複雑なファン心なのであった。