フエタロさんの日記です。

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牛丼とか牛丼屋について語ってみようか。

なんとなくそんな気分になったので牛丼について記す。
幼い頃の思い出としては、やはり日本における外食産業としての牛丼屋の始祖たる吉野家であろう。あの「明日はホームラン」で一世を風靡したCMと極彩色の丼ぶりが妙に記憶に焼き付いている。父親の通勤途中に店があり、土産に買ってきたそれはポリスチレン製のテイクアウト用の器に盛られており、妙に味気なく落胆したものだった。最も味については非常に美味で、小学校高学年になり自分で外に出歩くようになってからは独りで蕎麦、ハンバーガーと並んで最も愛用する外食店となった。
長じて都会のネズミ的独身ライフを謳歌する昨今、牛丼以外にも各種定食、カレー、果てはタコライスに至る豊富なメニューを有し、各チェーン毎に個性を競う牛丼屋は、無精者の自分にとっては欠かせない夕飯時の主戦力として頼りにする存在である。
吉野家は、その業界の先駆者たるプライドゆえ、長らく牛丼以外のメニューを拒んでいたが、あの忌まわしき狂牛病ショックの折、遂にその戦力不足を補う為にメニューを増やしたが、その豊富さにおいては松屋すき屋の後塵を拝したといえよう。とはいえ、とにかくストロングに牛丼が食べたい、味噌汁もいらんのでただ牛丼が食べたい、と衝動した時にはやはり吉野家だろう、と思わせる存在感は依然としてあのオレンジの看板から漂わせている。サブメニューでは牛すき鍋定食が冬場の定番として重宝させてもらっている。
浪人時代によく食べていたのが松屋で、吉野家と差別化を図る為に味噌汁サービス、さらに料金もやや安めという戦略を打ち出してはいるが、肝心の牛丼の肉にやや質量感が乏しい気がするので最近ではあまり牛丼を食してはいない。主に朝のソーセージエッグ定食や夜のハンバーグ、麻婆豆腐、チゲ定食などのメニューが値段の割に食べ応えがあって、そちらの方が好きだ。朝定食で小鉢が選べるのも微妙に嬉しい。
現在、一番利用しているのがすき屋だが、どうも日本国内で最も勢いのある系列らしい。次から次へと繰り出される変わり種牛丼の数々が、ファミレスに飽きたファミリー層に受けているのだろうか。僕の好みは濃厚な味わいのハーブチーズ牛丼、ご飯の代わりに豆腐とレタスが盛られたヘルシーな牛丼ライト、夜でも食べられる納豆豚汁定食、タコライスあたりか。
忘れてはいけないのが、あの狂牛病事件の折にも絶えることなく牛丼を供給しつづけた神戸らんぷ亭であろう。吉野家に匹敵するボリューム感のある牛丼を食わせてくれるが、いかんせん店舗が少ないのが難点。渋谷でも並木橋やハンズの裏といった、やや僻地に位置するため、どうしても日常の用途には向かないのが残念。やはり日常の食卓としては利便性が大事なのだ。
そして、東京の牛丼を語る上で絶対に外せないのが秋葉原の自作ストリートにそびえ立つ名店、サンボだろう。近年のアキバブームで流入した連中には立ち寄りがたいオーラを醸し出す店構え、牛丼以外では勝負する気もない潔いメニュー、そして原始の太陽のごとき熱量を湛えた力強い牛丼は電気街のソウルフードとしての風格を十二分に兼ね備え、ドネルケバブもジョナサンも無く、今からは考えられないほど貧弱であった昔の秋葉原の外食事情をアキハバラデパートやラホールらと支えてきたソウルフードとしての威厳を感じざるを得ない。風の噂に聞くと、なにやら謎の休業状態となっているらしいが、折を見て体調のいい時に食べに行きたいものだ。