フエタロさんの日記です。

はてなダイアリーサービス終了に伴い、2019/1/1よりこちらに移転しました。はてダでの更新日数は5625日でした。

【ネタバレ】「君たちはどう生きるか」を観てきたよ。

宮崎駿監督が長編引退を撤回して10年ぶりに公開される新作映画、一切の宣伝情報公開を行わないという前代未聞のスタイルで極秘のベールに包まれたままの初見を味わい尽くすべく初日初回のIMAXへと馳せ参じ、観劇後即喫茶店にインしてこのエントリをしたためております。

以下ネタバレ配慮なしになるので、気になる方はページを閉じるように。

 

ほんとにネタバレだかんね、読んじゃだめだよ!

 

警告したかんね!

 

そんじゃ始めるぞ!

 

今回、文字情報公開がなくエンディングクレジットにも表記がないため、キャラクターの表記は僕の想像によります、念のため。

オープニングは空襲を注げる鐘からの主人公の少年真人の母が入院する病院が火事になったとの不穏な幕開けで、え?またこっちの路線?!なんか辛気臭いんじゃねえかなぁとの心配しながら疎開先で早々と出現する身重の継母となる叔母という情報量過多な重い女を前にして口をつぐむしか出来ない真人と我々。いつから姉妹丼してんだよ親父ィー!そしてそしていわくありげ田舎の名家、広大な家屋、不気味なババァども、精気を吸われたかのようなジジィたち、軍需産業で羽振りの良さそうなイケイケ親父、都会っ子に当然のように襲い掛かる田舎の餓鬼どもの無慈悲なイジメ!と正直序盤のパートはあんまり面白くなかったのでもうちょい短くして欲しかった。どうせまたコンテ送り書きで後半がワチャワチャになるいつものハヤオパターンだろ、僕知ってるもんね(伏線)。

とはいえ、今では戦時中を実体験ベースで描写出来る映画監督も殆ど鬼籍に入り、そこは俺がやらねば!みたいな使命感があったんだろうか。あと出征する兵士の名前、そういうトコで内輪ネタぶっ込んで笑かしてくるのヤメレw

あとは田舎の旧家の広大な敷地の描写がまさに宮崎アニメ、って感じで美味しいのよね。長い石階段登って玄関から和風家屋を抜けて台所へ、裏の離れは夫婦一家の居室となり、小川の流れる森を分け入りそびえ立つ謎の塔という舞台設定を画面の中だけで見せてくれる場面設定・コンテの名手の面目躍如、老いてなお衰えを知らずかよ!と嬉しくさせられる。弓矢を自作するために釘を加工したり拾った羽をご飯粒で糊付けする描写をここまでしっかりと描写出来るアニメ監督は他にいねえよなあ…と本筋とはあんまり関係ないところにもいちいち感動させられるのは自分が歳を取ったせいだろうか。

そんなこんなで塔に誘われて失踪する身重の母親を追って、今回の狂言回しとなるアオサギに導かれて塔へと突き進む真人と巻き込まれたババァ。こっからが本番だ、と言わんばかりに変わる物語の空気、そうそうそうこなくっちゃ。ババァも端役かと思わせといてハンサム姉御に変身という意外な展開にはサービス精神を感じさせられてちょっと嬉しくなるけど飯はマズそうだった。宮崎アニメ史上最もマズそうにみえたな、あの謎煮込み。あとは単なる集団暴力ペリカンかと思いきや結構重い来歴を語り始める老ペリカンとかウケ狙いのゆるキャラ枠なのにペリカンに捕食され始めるフワフワとか、こりゃこの地底世界も一筋縄じゃ行かねえぞと不穏な空気を漂わせる。そして今回最高にイカしてたインコ大帝率いる人食いインコ王国!さすが俺たちのパヤオは容赦ねえなあ!と何度も大爆笑させられたわ。妊婦は食わんがガキは食ってよし!とプレデター並の倫理観、殺人解体厨房に主人公を拉致監禁というホステルテイストの展開とか最高過ぎてゲラゲラ声を立てて笑ってしまった。そしてインコ大帝に歓呼三声!みたいな鬨の声を上げる親衛隊の絵面がまんまトルメキア第三軍でここだけ実質ナウシカ2だったと言っても多分過言ではない(言い過ぎ)。

そして見終わった後でも理屈がさっぱり分からんけど焼死したはずの実母が若返って炎の少女チャーリーよろしくデコ出しロリママとなってカムバック、パンにバターとジャムを山盛りにしてくれるよ!という超展開を力づくで納得させていく宮崎アニメらしさ、コナンが三角塔から飛び降りた頃と変わんないよね。もう死ぬまでこれなんだろうな、嬉しいな。でも声優は誰だが知らんけど下手くそだったのでこの芸能人キャスティングはそろそろ止めにしてほしいな。庵野さんよりは上手いんだけど。

そして中盤で真人たちを必死で捜索する父親にババァ連中から明かされる衝撃の事実、謎の塔は幕末に宇宙からの飛来物だった!そういう大事なことは隠さずちゃんと話しとけよ!いよいよ物語は戦中派回顧録から異世界ファンタジーを経てSFへと至り、遂に黒幕たる積み木を積んで世界を守護しているとのたまう謎のセカイ系ジジイが現れるという超展開。ああ、この積み木がデウス・エクス・マキナで最後は崩して世界を崩壊させて風呂敷畳むンすね、まで分かるというのはまあわかりやすさというか安心感もあり。ただ前半で尺を取りすぎたのか息切れしたのか、ちょっと後半の展開が早足すぎてちょっと物足りなさを感じてしまった。カリ城みたいに粘り強く風呂敷畳んでいく醍醐味には及ばなかったかなあ。でも最後の崩壊する塔をバックに身重の継母とババァとペリカンとインコの大群を引き連れて現世に帰還するシークエンスは爽快感があって良い終わり方だった。終わりよければ全て良し。

というわけで、宮崎アニメ史上最高傑作!とか全世界刮目してみよ!みたいな感じではなかったけど、何が起こるかわからないまっさらの宮崎アニメをハラハラドキドキしながら見るというとても楽しい体験をさせてもらえて本当に楽しかった。アニメ版ナウシカを初日初回に劇場で観てから何十年も経ち、世の中もアニメも色々と様変わりしたし自分もだいぶ歳をとったけど、あの頃のように前の晩まで期待に胸膨らませて劇場へ馳せ参じ、心の底から大笑いさせてもらえて本当にありがとうございました。次回作も楽しみにしています!(オイ