フエタロさんの日記です。

はてなダイアリーサービス終了に伴い、2019/1/1よりこちらに移転しました。はてダでの更新日数は5625日でした。

『雲のむこう、約束の場所』の感想。

期待通りの面白さ!『ほしのこえ』を面白いと思った人は迷わず劇場に足を運ぶべきかと。青臭いなぁとは思いつつも共感してしまうキャラクターの心象描写だとか、今のアニメとしては最強クラスの背景の美しさとかレイアウトの見事さは前作以上に堪能出来るし、天門氏の音楽も弦楽四重奏を使って劇伴にふさわしいクオリティ。ただ、長編劇場映画としてみると、脚本や設定の荒さや作画の未熟さが目に付いてしまうのが残念な処か。
以下、ネタバレありの詳細な感想をば。変な先入観を持って欲しくないので、出来れば鑑賞後にどうぞ。
という訳で、ストーリーなんだけど、なんというかラノベ臭が強いなぁとか(笑)。中学時代の片思いのあの娘と世界をバーターみたいな。いや、こういうの僕は嫌いじゃないんだけど、拒否反応起こす人が多そうだな。あと僕の場合、映画は心情描写とかシチュエーションで楽しめればいいやみたいなトコあって、ストーリーが破綻してても気にしないおおらかさがあるのだけど、今回はサユリの病気と平行世界と塔の因果関係が余りにも強引というか説明不足という感が強かった。それと幾らなんでもユニオンの巡視船からファランクスの砲撃を浴びた岡部たちの小型船はどうやって逃げ延びたんだよとか、中学生がバックヤードで作ったジェット&変形飛行機をテスト飛行なしで飛ばすってどーよ?とか、飛行経験ゼロのヒロキがイキナリ初飛行で吹雪吹く開戦直後の最前線をジェットでレーダーを掠めて低空飛行でくぐり抜けるって不可能でしょ!とかそんな若造に自分達の組織の最終目的となる塔破壊テロを任せる岡部って無責任すぎない?とか、パラレルワールド的世界観とはいえ現代を舞台にした世界観としてはちと強引すぎる描写は厳しいな。恒星間を携帯メールで連絡、ってゆーのはセンス・オブ・ワンダーの中だからこそ許せる力技だよな。
前作の最大の魅力は商業作品や集団作業の中では難しい、新海氏個人の心情をキャラクターにダイレクトに吐露させるパーソナルな描写だと思うというのは、以前の映画百選のレヴューでも書いたのだけど、本作でもその辺はばっちりで嬉しくなる。学生時代の素朴な思い出、都会でヒロキの孤独、旧友との齟齬と和解とか。2年掛けて待った甲斐はあったなぁ。どっかのロリコンアニメとか老人アニメとか作っちゃうような巨匠よりは遥かに前向きな創作姿勢な気がする(笑)。
今回、一番不満なのは作画。下手という訳ではないんだけどもモニタやトリウッドの小さいスクリーンならともかく、小屋の大画面にかけるにゃ役者不足?な気がする。幾らアニメの価値は作画だけで決まるものでもないとはいっても、それなりに見れる造りには欲しい。製作体制とか予算の規模とかを考えると無いものねだりなのかもしれないけれど。やはり手書きアニメの時代は黄昏を迎えているということなのか・・・。ロストテクノロジーと化す日も近いな。あと、CGIの現代兵器もちょっと物足りない気が。AC5のムービーに負けてるよ・・・。電車とか踏み切りとかヴェラジーラとかに比べて愛が感じられないっす(笑)。
作画に反比例して、背景の素晴らしさは文句なし!田舎の中学校!廃駅!夜の新宿!萌えたよ!萌え尽きたよ!これを大画面でスメルするために劇場に行け!と強く云いたいですよ!朝焼けと夕焼けの色の美しさは世界一だよマコちゃん!